新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「俺たちぐらいの歳になるとさ、やっぱりいつまでも遊んでばかりもいられないということは分かっているんだ。無論、それなりの相手だったら、それなりの割り切り方もあるけれど、それとはまた別のものだし、まして相手が真面目に考えているとしたら、尚のこと相手を思いやる気持ちが先に立つと思うんだ」
「そうなんですか」
「まあ、守るべきものがないと、男はやっぱり落ち着けないというか、そんな感じだからね。そういう意味でも、失礼ながら陽子ちゃんは、貴博にとってそんな遊びの相手とは違うでしょう?」
こういう場合、どう言えばいいんだろう? ただ、小首を傾げて仁さんを見ていた。
「だとすると、尚更、貴博は葛藤が多いと思うよ」
「葛藤? 高橋さんは、何を……何で葛藤をしているんですか?」
高橋さんは、ミサさんのことで葛藤しているの? それとも、私のことで葛藤しているの?
「何を? うーん……そう言われても……。ただ、よく言うよね? 頭では分かっていても、心がついて行かないって。貴博は、ああいう責任感の強い真面目な男だから、自分の心には嘘はつけないんだと思う」
「もしかして、私は高橋さんを苦しめているんですか?」
もしそうだとしたら、どうしたらいいんだろう?
「そうじゃないよ。そんな風に思っていたら、一緒になんて居ないだろうし、たとえ苦しんでいるとしても、それは自分がいけない思う奴だから。人間は、さっきも言った割り切れば付き合える器用さと、心には嘘はつけない感情を持ち合わせている不器用さが厄介なんだと思う。かといって、もう駄目になったから、直ぐに次っていう感じの使い捨てみたいなのも俺はどうかと思うし、別にいつまでもっていうのが良いとは言わないけれど、少なくともそれだけ大事にしていたっていう裏返しでもあるわけでしょう?」