新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「でも、来てくれて嬉しかった。ありがとう。フッ……言ってることが矛盾してるな、俺」
高橋さん……。
「あの……」
「疲れてるはずだ。本当に、そろそろ寝るぞ。ほら」
高橋さんはベッドの左側にずれて、右腕を枕の首寄りの部分に平行に置いたので、驚いて高橋さんの顔を見た。
「ハハッ……。もう、何もしない。だから、こぉーっこ」
そう言って、ポンポンと私に来るように高橋さんが右手でベッドマットを叩いている。
言われて、少しずつ身体を左側に寝ている高橋さんの方にずらしていると、グイッと右手で高橋さんが私の右肩を引き寄せたので、その拍子に私の頭は高橋さんの脇の下にすっぽりと入ってしまった。
こんなにピッタリくっついて良いものかと、慌てて高橋さんを見上げると、高橋さんが微笑んでいるように見えた。
「これが、いちばん楽なんだよなぁ」
「えっ? 何が……ですか?」
何が、楽なの?
「ん? 腕枕は、疲れるんだよ。でも、こうしていれば腕も痺れないし朝までGoodなわけ」
ハッ!
何だか、もの凄い内容の話のような気がする。腕枕が疲れると知っていて、これがいちばん楽だって分かるってことは……結構、そういうことをしていたってこと?
そんな台詞も、さらっと言えてしまう高橋さんが何だかもうよく分からなくなっていると、高橋さんが私の右肩を掴んでいる右手に力を込めた。
どうしても、敏感に反応してしまう。
「おやすみ」
高橋さんが髪にキスをして、自分の右頬を寄せた。
「お、おやすみなさい」
何だか、高橋さんとこんなにくっついていて、緊張して眠れないんじゃないだろうか。
けれど、いつの間にか高橋さんの温もりと優しい香りに包まれて安心してしまったのか、眠ってしまったようだったが、トイレに行きたくなって目が覚めた時には、隣に高橋さんの姿はなかった。
あれ? 
高橋さん。何処に行ったんだろう? 今、何時かな……。
そっと起き上がって、バッグの中から携帯を探して画面を見ると、かなり眠っていた気がしたが、まだ2時半だった。