新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「うわっ。何だよ」
「お、おやすみなさい」
それでもお構い無しに、素早く部屋に戻ろうとしたが、高橋さんに腕を掴まれてしまった。
「待てよ」
ひゃっ。
「はぁ……」
高橋さんが、大きな溜息をついた。
「このままだと、お前が風邪をひく。一緒に寝るぞ。いいな?」
高橋さん。
何と返事をしていいのか分からず、俯いたまま黙っていた。
どうしよう……本当に、一緒にダブルベッドで寝るの? しかも、高橋さんの部屋のベッドより、見た感じ狭いような気がする。多分、高橋さんの部屋のベッドは、キングサイズだったと思う。
ああ。心臓が、早くも爆発しそうな勢いでアタックし始めている。
高橋さんが布団を持って立ち上がると、部屋へと運んだ。
「ほら、早く。もう寝るぞ」
まだリビングのソファーの前に立っていた私を、ベッドメイクを終えた高橋さんが呼びに来た。
そして、1歩もその場を動けずに居た私に業を煮やしたのか、高橋さんは私の腕を引っ張って部屋に入るとドアを閉めた。そのドアが閉まる音にも、過剰に反応してしまう。
「あっ……」
う、嘘。
直ぐに高橋さんが電気を消したので、慣れない場所で何も見えなくなってしまい、何処に何があるのかさっぱりよく分からない。
「陽子ちゃん。はぁやぁくぅ」
エッ……。
高橋さんが、戯けた声で私を呼んだ。
「キャッ……」
暗闇の中で不意に高橋さんに腰を引っ張られ、そのままベッドに押し倒されて布団を掛けられた。
うわっ。
「あ、あの……」
ベッドに入った私を、隣に寝ていた高橋さんが強く抱きしめた。
「ちょっ……た、高橋さん?」
う、嘘でしょう?
そして、私が着ていたパーカーのファスナーを開けて、高橋さんが中のTシャツの首の所に手をかけた
「い、嫌……」
いくら何でも、明良さんの別荘でなんて。そんなのって……。
「黙って」
抵抗しようとしたが、両手首を頭の上で高橋さんの左手に無理矢理押さえつけられてしまった。
嘘でしょう? このまま、高橋さんと……。
思わず体が反応して、首を窄めた。
高橋さんが、Tシャツの襟首を持って下に引き下げたので、鎖骨より下の胸が少しだけ露わになると、高橋さんの前髪が私の顎と首を掠めた。反射的に顔を横に背けた途端、高橋さんが体重を少しだけ私の体の上にかけた。
ああ。高橋さんも、やっぱり男の人で……。男の人は、みんなこうなのかな? 高橋さんも、例外ではなく……。