新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

し、しまった。聞かれちゃった。
「い、いえいえ、何でもありませんから」
慌てて否定をしたが、黙ったまま高橋さんは視線を明良さんの方に向けた。
「俺、酒飲んでいい?」
『はあ?』
仁さんが、いきなりそんなことを言い出して冷蔵庫を開けると、高橋さんと明良さんが同時にハモって、今度は仁さんを直視している。しかし、仁さんは明良さんの反対に遭い、まだお酒は飲ませてもらえなかった。
お腹も空いていたけれど、まずはお風呂に入ってその後、ゆっくりしようということになって、順番に温泉付きのお風呂に入って温まり、それからお鍋を囲みながら宴会が始まった。高橋さん達を見ていると、本当に飽きないというか、気心が知れているから会話も凄く面白いし、楽しい。温泉に浸かりながら、そんなことを考えていた。
「陽子ちゃん。何、飲む? ワイン? それとも日本酒?」
まずは、ビールで乾杯をした後、明良さんが聞いてくれた。
「ありがとうございます。えーっと……」
何にしよう。ワインも最近飲んでいなかったから、久しぶりに飲みたい気もするし……。
「明良。アルコールは、あまり飲ませない方がいいぞ。かぁなぁり、酒乱だから」
高橋さんが、明良さんに向かって制止するようなポーズをした。
「た、高橋さん。何、言ってるんですか? そ、そんなことないですから」
誤解されてしまいそうだったので、焦って否定した。
「そうなの?」
「仁さん。本当に、違いますから」
高橋さんが変なことを言うから、仁さんにまで聞かれてしまう始末。
結局、少しだけ飲ませてもらえることになった。
「でもさあ、日本の経済は大丈夫なのかねえ?」
はい?
いきなり明良さんが、そんなことを言い出した。
「経済?」
仁さんが、明良さんに問い返す。
「だってよ? 日本を背負って立っているこの3人が、此処に集結しちゃってるわけでしょ? 何かあったら、どうするんだろうと思ってさ。でも、もし何かあったとしても、知らないよーってことなんだけどね」
はあ……明良さん。
酔っているんだか、酔っていないんだか、よく分からない。
「明良。安心しろ。そう思ってるのは、お前だけだから」