新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

お誕生日?
あっ。もしかして……。
昔、黒沢さんが高橋さんに誕生日が何時なのかを聞いたことがあった。その時、高橋さんは確か……2月20日って応えてた。
2月20日……嘘。もう直ぐじゃない。どうしよう、忘れてた。
「お前等、何、考えてんだよ!」
何だか呆れ返ったような言い方で、高橋さんがジッとこちらを見ていた。
高橋さん……。
呆れた顔でそう言うと、高橋さんは明良さんと私の頭を軽く叩いた。
「いったい、何歳なんだ?」
「俺? 俺は、27歳。この4月で28歳になるダンディーな男よ。分かってると思うけど、貴ちゃんもこの20日で27歳に」
「何が、ダンディーだ。明良の頭の中は、お花畑なんじゃないのか?」
お、お花畑って……。
「ああ、もういいから早く中に入れてくれ。重いし、寒い」
仁さんが、わざと高橋さんと明良さんの間を通って玄関の中に入っていった。
「陽子ちゃんも、入って、入って。仁の運転じゃ、疲れたんじゃない?」
「えっ?」
「どういう意味だ?」
荷物を持った仁さんが振り返って、明良さんを見た。
「仁の運転技術は、問題ないんだよ。だけど、休憩もしないで一気に行くことが多いから、陽子ちゃんが疲れたんじゃないかと思ってさ」
「あの、そんなことないですよ。途中で、高速のサービスエリアにも寄って下さいましたから」
「へぇ……そうなんだ」
明良さんが、仁さんの顔を覗き込むようにしながら、いい匂いのする方へと先に歩いて行った。
それにしても、別荘の中に入った時からとてもいい匂いがしていて、ちょうどお昼時に差し掛かっていたので、かなりその匂いが胃を刺激する。
「おっ。旨そうな匂いジャン」
仁さんが言いながら、明良さんにケーキの入った紙袋を渡した。
「今日は鍋にした。これなら人数分に関係なく作っても、誰かさんにバレる心配もなかったから」
明良さんが、チラッと高橋さんを見ると、高橋さんは思いっきり目を細めて横目で明良さんを冷ややかに睨んでいた。
「プッ……」
何だか、その光景が可笑しくて、思わず吹き出してしまった。
「お前。何、笑ってんだよ」
今まで、冷ややかな視線を明良さんに送っていた高橋さんのその視線が、そのまま今度は こちらに向けられた。
うっ。