新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「そう。まあ、ハイブリッジはあまり変化ないかもしれないけど、男によっては何人かの友達と一緒に彼女と出掛けると、ガラッと態度が変わる奴とかも居るからね。旅先で、思いも寄らない行動を取るってこともあるし。だから、サプライズの企画だっけ?」
「うん」
「それもお声が掛かったんだから、素直に行って一緒にその計画に乗って楽しむのが一番。それと、また違うハイブリッジの一面も見られるかもしれないから、一石二鳥で楽しんでおいでね」
「まゆみ……」
「私さ、いつも友達の話とか聞いてて思うんだよ。あんな人だとは思わなかったとか、今まで気づかなかったとか。そういうことを聞くと、何でもっと相手をよく見なかったんだよって言いたい。だから陽子にも、ちゃんとハイブリッジのことを見て欲しいんだ。気づかなかった、気づけなかったは、自分の責任でもあるんだからさ。何も、損することはないんだし」
「そうだね」
まゆみの言う通りなのかもしれない。高橋さんのことは、仕事中の高橋さんと数少ない2人で居た時のこと。それと、明良さんと3人で居る時の高橋さんしか私は知らない。それも、高橋さんの家やご飯を食べに行った時に限定されている。まゆみと電話をしながら、もっと実際の生活の中での高橋さんというか、素の高橋さんを知りたくなった。
「だから、深く考えずに行ってらっしゃい。それじゃ、あんまり待たせると悪いから」
「あっ。ちょ、ちょっと、まゆみ?」
電話を一方的に切られてしまい、お礼も言えなかった。
待たせてしまった仁さんに、電話が終わったことを告げようと運転席の窓をコンコンと叩くと、仁さんがドアを開けて出て来てくれた。
「すみません、お待たせしてしまって。間に合いますか?」
「大丈夫なの?」
私の言葉に反応して、仁さんが真面目な表情でこちらを見た。
「せっかくのお休みなんだし、もし気が進まないのなら無理にとは言わないから。遠慮しないで」
仁さんが凄く気を遣いながら、言ってくれているのが分かる。
「あの、私……行きます。一緒に、行かせて下さい。連れて行って下さい」
「OK! それじゃ、トランクに荷物を載せよう」
そう言って、仁さんはバッグを持ってくれるとトランクに入れてくれた。
「ありがとうございます」
仁さんは微笑みながら、助手席のドアを開けてくれた。
高橋さんもそうだけど、明良さんも仁さんも本当にジェントルマンだな。ごく自然にその動作が出るところが、格好つけてるわけでも嫌らしくもない。
仁さんの運転は、高橋さんの運転と少し似ていたので、あまり面識のない仁さんと車に乗る前は緊張していたが、何となく安心出来た。
「明良から聞いてると思うけど、陽子ちゃんが行くことを貴博は知らないからきっと驚くと思うよ」
「そ、そうでしょうか? 高橋さんは何時も動じない人だから、私なんかが行っても驚かないんじゃ……」
何となく、高橋さんは驚かないような気がした。
「ハハッ……。貴博だって、血の通った生身の人間だよ? いきなり陽子ちゃんが別荘に登場したら、想定外のことだから貴博だって驚くと思うけど」
「でも、会社の部下がいきなり現れたら、やっぱりそこは上司としてというか、上司の顔に無意識になっちゃいませんか?」
「上司と部下か……。貴博は、ONとOFFの切り替えは上手くスパッと出来る奴だけどな」