新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「ハイブリッジの会社での一面だけじゃなく、プライベートの一面ももっと見ておいた方がいいじゃない。会社で上司として接する以外の顔も、もっと私だったら見たいけど」
上司として……。
ふと思えば、上司として私に接してくれる高橋さんのプライベートの顔は、少しだけ見ている気がするけれど、まだまだ知らないことばかりなことに気づいた。
「迷うことは、全くないわよ。土曜日は、絶対行くべし」
「うーん……。でも、何か恥ずかしいな」
「恥ずかしいなんて言ってたら、ハイブリッジ誰かにかっさらわれるかもしれないわよ? モテないわけじゃないんだから」
「そ、そうだよね。分かった。行くことにしようかな」
「行くことにしようかなじゃなくて、行くの」
「は、はい」
まゆみの言葉で決断してみたものの、やはり何となく恥ずかしい気持ちを拭えないまま、土曜日の朝になってしまった。
仁さんから 『後、20分ぐらいで着く』 というメールを貰ってから、急いで戸締まりと火の元の確認をして電話が来るのを待っていると、ちょうど20分後に仁さんから電話があって、急いで下に降りていった。
「おはようございます」
「おはよう。今日は、よろしく」
「あ、あの……そのことなんですが……」
どうしても、やっぱりサプライズという計画に、私如きが関わっていいものかどうか。高橋さんが、本当に私を見て驚いてくれるかが凄く不安で、まだ行くことを迷っていた。
「何? どうかしたの?」
「その……」
明良さんと違って、まだ数えるほどしか会ったことのない仁さんにこんなことを言うのは失礼かなと思えて、なかなか言い出せずに下を向いて躊躇っていた。
「もしかして、行きたくない?」
エッ……。
仁さんの言葉に、思わず顔を上げた。