新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

まゆみが手を合わせながら、何か唱えている。
「陽子は、いいからコピー続けて」
まゆみが、振り向いた私を半ば強制的にコピー機の方に向かせた。
そうだった。レジメを12部ずつコピーしなくてはならなかったので、時間もなかったから後ろの会話に気もそぞろになりながら、急いでコピーを始めた。
「何? 貴女。誰に向かって、言ってるのよ」
「誰に向かって? 見りゃ、分かるでしょう? 今、視線がバッチリお互いに合ってるおたく等のことよ」
「お、おたく等ですって?」
「ま、まゆみ」
ちょうどコピー中だったので、慌てて後ろを振り返ってまゆみの袖を引っ張ったが、まゆみはお構いなしに続けてしまった。
「通路に屯されたら当然邪魔になるってことぐらい常識で分かるはずなのに、それが分からないみたいだから、烏合の衆と言われないだけまだ有り難いと思って頂きたいもんだわ」
まゆみったら、大丈夫なんだろうか? よりによって、黒沢さんと土屋さんに喧嘩売るようなことを言ってしまって。
「陽子。コピー、終わってる」
「えっ? あっ……」
まゆみに指摘されて、慌ててまたコピー機の方に向き直って次のページのコピーを始めた。
「貴女。何様?」
「神様」
うわっ。
益々、エスカレートしてる。
早く、コピー終わって……。
「ちょっと、何処の所属? 名前を名乗りなさいよ」
「My name is 神田」
始まっちゃった……。
「神田まゆみ。神様の神に、田んぼの田。万人に愛され、誰もが読めるようにと、まゆみはひらがな。総務におりますから、覚えておいて下さる?」
背中から聞こえるまゆみの声に、この後、どうなってしまうのかと思うと余計に怖くなって手の震えが止まらない。
「何年目よ?」
「この子と同期なんじゃないの?」
終わった!