新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「あら? 図星だったかしら? だって、そうでしょう? 確たる証拠もないのに、何でもかんでも直ぐに動く拡声器のように触れ回って調和を乱すだけで、何らプラスになることはないんだから。それとも、あれかしら? 黒沢さんのお父様はパワハラ・セクハラ・虐め対策委員会の親玉だから、その手の内容は娘には筒抜けになってるとか? だとしたら、それはかなり問題だわねえ……」
折原さん……。
「そ、そんなこと、あるわけないでしょ? 父は、関係ないわよ」
「そう。だったら、確たる証拠もないのに言うこと自体、これまた問題だわ。専務は、このことを知ってるのかしらねえ?」
「い、行きましょう」
「え、ええ」
まるで逃げるようにして、折原さんと私の前から黒沢さんとその取り巻きが居なくなった。
「まったく……その無駄な労力、他に使えって」
「あの、折原さん」
「矢島ちゃん。おはよう」
「あっ。おはようございます。すみません。何か、私……」
遠藤主任のことが、黒沢さん達にまで伝わってしまっていたのかと思い、またあの恐怖が蘇ってきたらどうしようとドキドキしていたが、折原さんのお陰で少しホッとした。
「大丈夫。高橋は、いろんな意味で頼れる上司だから」
「はい。でも、何か高橋さんにご迷惑を掛けてしまったみたいで……」
「迷惑? 高橋は、そんな風には思ってないし、感じてもいないと思うわよ。上司として、当たり前のことをしたと思ってるんじゃない?」
「上司として……」
「何?」
呟くように言ったので、折原さんによく聞こえなかったみたいだった。
「いえ、何でもないです。ありがとうございました」
「いえいえ。あの局軍団とは、いずれ決着つけなきゃいけない時が来ると思ってるから。それじゃ、また仕事で」
「はい」