新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

明良さんの車で家まで送ってもらい、シャワーを浴びながら先ほどの話を思い出し、きっと今頃高橋さんは明良さんに思いっきりいろいろ聞かれてるのかな? 帰りの車の中でも、突っ込まれていたんじゃ……。
高橋さんがビールを飲んでいたことを、明良さんに話してしまったけれど、まさかそこまで考えが及びもしなかった。もっと先の、そのまた先ぐらいまで読んでから物事は言わないと、高橋さんや明良さん達にはおよそ太刀打ちできない気がする。
明良さんに追求されていることを想像すると、少し高橋さんが可哀想な気もしたが、きっといつものようにポーカー・フェイスでかわしていそうで、その様子が目に浮かぶようだった。

「おはよう」
「見た?」
「うん。見た、見た」
翌朝、出社すると、掲示板の前に人だかりが出来ていて、みんな一様に驚いた表情を浮かべながら話をしている。
何だろう?
あっ……。
掲示板の前の人が少なくなった頃を見計らって見に行くと、そこには遠藤主任の辞令が貼り出されていた。
「今日付で、異動だって」
「異例よね。しかも、子会社でしょう?」
「何、やっちゃったのかしら?」
唐突な遠藤主任の異動に対して、訝る言葉が聞こえてくる。
「さぞ、邪魔者を排除出来てすっきりしたでしょう」
エッ……。
「大人しい顔して、上司を使って人1人の人生を狂わせといて、よく平気でいられるわね。恐ろしい」
黒沢さん……。
何故?
どうして黒沢さんが、遠藤主任とのことを……。何か、知っているの?
「贔屓されていると、何でも得よね。ちょっと上司に告げ口すれば、社員の1人や2人、直ぐに飛ばせるとでも思ってるんでしょ?」
そんな……。