何にも、怒ってなんかいないのに。
高橋さんが、左手で顔の左半分を覆いながらまた小さくため息をつくと、左足を踏み込んでサイドブレーキを外して無言のまま車を発進させた。
「何処に、行くんですか?」
「いいから、黙って一緒にくればいい」
「高橋さん?」
しかし、私の問い掛けに高橋さんは無言のままだった。
どういうこと?
高橋さんは、いったい何処に向かっているの?
会話のない車内に、スピーカーから聞こえてくる英語で歌う女性ボーカリストの澄んだ高音が、やけに物悲しく響いている。
あっ。
暫くして、周りの景色が見覚えのある道に差し掛かったので思わず高橋さんを見たが、高橋さんは前を向いたまま一度もこちらを見ることなく、黙って車の運転を続けていた。
そう……。そこは、高橋さんのマンションに続く車路だった。
駐車場に車を停めると、高橋さんが降りて来て助手席のドアを開けた。
「降りて」
「高橋さん。あの……」
うわっ。
車から降りることに躊躇していた私の手首を高橋さんが掴んで助手席から降ろすと、そのまま手首を引かれてエレベーターに乗って高橋さんの部屋の前まで来てしまった。
「あの……」
まるで高橋さんは、私の声を無視するようにドアの鍵を開けた。
「入って」
「高橋さん」
「いいから、入って」
不安になって玄関前で躊躇いがちに高橋さんを振り返ると、半ば無理矢理背中を押されて中に入れられ、同時に高橋さんがドアの鍵を閉めた。
何故か、ドアの鍵を閉めたその音が今日は異常に大きく聞こえて、思わず振り返ってしまった。
すると、高橋さんが真後ろに居たので目が合ってしまい、慌てて視線を逸らせながら前に向き直った。
「こっち」
高橋さんが、先に靴を脱いで私の手首を引っ張りながらリビングに向かうと、家の鍵をテーブルの上に置いて私をソファーに座らせた。
「そこで、待ってろ」
そう言うと、高橋さんはキッチンに行ってしまった。
何時になく強引な高橋さんの行動に、少し戸惑いを覚える。
高橋さんは、いったい……。
キッチンから戻って来た高橋さんの手には、ウーロン茶のペットボトルが2本握られていた。
「良かったら」
「すみません。ありがとうございます」
そう言って、私の前のテーブルの上にウーロン茶のペットボトルを置くと、直ぐ傍のパソコンの電源をONにしてから高橋さんはキャップを捻ってウーロン茶を飲んだ。
パソコンの電源を入れて、何をするんだろう?
「こっち」
「えっ? あっ、はい」
高橋さんは、パソコンの前の椅子を引くと私に座るよう促した。
言われるままパソコンの前の椅子に座ると、スタート画面になったところで後ろに立っていた高橋さんが、座っている私を後ろから両腕で挟むようにしてパソコンのキーボードを打ち始めた。画面が変わる度に高橋さんがキーボードをその体勢で打つのだけれど、その都度、高橋さんの胸が私の背中に触れてドキドキしてしまう。
すると、高橋さんが1つのファイルを開いた。
V.D file?
「お前が知りたかったのは、これだろ?」
エッ……。
高橋さんが、マウスで開くをクリックすると、画面いっぱいに名前と見出しの羅列が出てきた
何……これ?
高橋さんが、左手で顔の左半分を覆いながらまた小さくため息をつくと、左足を踏み込んでサイドブレーキを外して無言のまま車を発進させた。
「何処に、行くんですか?」
「いいから、黙って一緒にくればいい」
「高橋さん?」
しかし、私の問い掛けに高橋さんは無言のままだった。
どういうこと?
高橋さんは、いったい何処に向かっているの?
会話のない車内に、スピーカーから聞こえてくる英語で歌う女性ボーカリストの澄んだ高音が、やけに物悲しく響いている。
あっ。
暫くして、周りの景色が見覚えのある道に差し掛かったので思わず高橋さんを見たが、高橋さんは前を向いたまま一度もこちらを見ることなく、黙って車の運転を続けていた。
そう……。そこは、高橋さんのマンションに続く車路だった。
駐車場に車を停めると、高橋さんが降りて来て助手席のドアを開けた。
「降りて」
「高橋さん。あの……」
うわっ。
車から降りることに躊躇していた私の手首を高橋さんが掴んで助手席から降ろすと、そのまま手首を引かれてエレベーターに乗って高橋さんの部屋の前まで来てしまった。
「あの……」
まるで高橋さんは、私の声を無視するようにドアの鍵を開けた。
「入って」
「高橋さん」
「いいから、入って」
不安になって玄関前で躊躇いがちに高橋さんを振り返ると、半ば無理矢理背中を押されて中に入れられ、同時に高橋さんがドアの鍵を閉めた。
何故か、ドアの鍵を閉めたその音が今日は異常に大きく聞こえて、思わず振り返ってしまった。
すると、高橋さんが真後ろに居たので目が合ってしまい、慌てて視線を逸らせながら前に向き直った。
「こっち」
高橋さんが、先に靴を脱いで私の手首を引っ張りながらリビングに向かうと、家の鍵をテーブルの上に置いて私をソファーに座らせた。
「そこで、待ってろ」
そう言うと、高橋さんはキッチンに行ってしまった。
何時になく強引な高橋さんの行動に、少し戸惑いを覚える。
高橋さんは、いったい……。
キッチンから戻って来た高橋さんの手には、ウーロン茶のペットボトルが2本握られていた。
「良かったら」
「すみません。ありがとうございます」
そう言って、私の前のテーブルの上にウーロン茶のペットボトルを置くと、直ぐ傍のパソコンの電源をONにしてから高橋さんはキャップを捻ってウーロン茶を飲んだ。
パソコンの電源を入れて、何をするんだろう?
「こっち」
「えっ? あっ、はい」
高橋さんは、パソコンの前の椅子を引くと私に座るよう促した。
言われるままパソコンの前の椅子に座ると、スタート画面になったところで後ろに立っていた高橋さんが、座っている私を後ろから両腕で挟むようにしてパソコンのキーボードを打ち始めた。画面が変わる度に高橋さんがキーボードをその体勢で打つのだけれど、その都度、高橋さんの胸が私の背中に触れてドキドキしてしまう。
すると、高橋さんが1つのファイルを開いた。
V.D file?
「お前が知りたかったのは、これだろ?」
エッ……。
高橋さんが、マウスで開くをクリックすると、画面いっぱいに名前と見出しの羅列が出てきた
何……これ?

