その声に、驚いて顔を上げると、高橋さんが笑っていた。
「い、いえ、その……。す、すみません。私……これ以上、噂が酷くなって高橋さんに、ご迷惑を掛けたくなくて。それで……今日は、高橋さんと一緒に帰ってはいけないと思って……」
すると、高橋さんがカーラーを外した私の髪を手櫛で整えてくれながら、真剣な表情で私を見た。
「いいか? 何も悪いことをしていないのだったら、堂々としていろ。他人の言うことなど気にするな。言いたい奴には、言わせておけばいい。言えるだけ、暇なんだと思えばいいだけのことだ」
高橋さん……。
「余計な雑音は、何の得にも役にも立たない。自分にとって、不利益なことだけだからな。たとえ、それが耳に入って来ようが、自分を信じて相手にしなければいいだけのこと。相手もリアクションがなければ面白くなくなり、自然とそんな会話は葬り去られて、また違う話題に没頭するだろうから。いいな?」
「はい……」
余計な雑音は、何の得にも役にも立たない。
「あと、ちゃんとご飯は食べろ」
エッ……。
「体は資本だ。体が弱っていると、心まで弱ることもある」
「はい。すみません」
何だか、高橋さんに心配ばかり掛けてしまっていて、それが哀しくて、悔しくて涙が溢れていた。
「泣くな」
高橋さんに言われて黙って頷いているが、噂のことや黒沢さんや紺野さん達から言われたいろんなことが思い出されて涙が止まらなくなってしまった。
「そんなに泣いてばかりいるんだったら、美味しいケーキ買ってきたけど持って帰るかな」
「えっ?」
右手の甲で頬を伝う涙を慌てて拭って見ると、高橋さんがシューズボックスの上に置いた紙袋の中を覗き込んでいた。
「あ、あの……」
「お前、現金な奴だな。ケーキと聞いて泣き止んだのか?」
そう言うと、高橋さんが悪戯っぽく笑った。
「えっ? えっ? あっ。い、いえ、そんなことないですよ。絶対そんなことないです」
「フッ……。まあ、いい。泣きやんでくれんだったら、それで」
高橋さん……。
ハッ!
ずっと、玄関に立ちっぱなしのまま話していたことに、今頃気づいた。
「あっ。すみません。こんなところで……。あの、良かったら上がって……キャッ……」
後ろを振り返った途端、先ほどシューズボックスから出したスリッパのつま先部分を左足で踏んでしまい、尚かつ、その左足で踏んだスリッパに右足を突っ込んでしまったものだから、身動き取れずに足がもつれて床に前のめりに倒れてしまった。
ああ。きっと、顔面を打ち付ける!
「い、いえ、その……。す、すみません。私……これ以上、噂が酷くなって高橋さんに、ご迷惑を掛けたくなくて。それで……今日は、高橋さんと一緒に帰ってはいけないと思って……」
すると、高橋さんがカーラーを外した私の髪を手櫛で整えてくれながら、真剣な表情で私を見た。
「いいか? 何も悪いことをしていないのだったら、堂々としていろ。他人の言うことなど気にするな。言いたい奴には、言わせておけばいい。言えるだけ、暇なんだと思えばいいだけのことだ」
高橋さん……。
「余計な雑音は、何の得にも役にも立たない。自分にとって、不利益なことだけだからな。たとえ、それが耳に入って来ようが、自分を信じて相手にしなければいいだけのこと。相手もリアクションがなければ面白くなくなり、自然とそんな会話は葬り去られて、また違う話題に没頭するだろうから。いいな?」
「はい……」
余計な雑音は、何の得にも役にも立たない。
「あと、ちゃんとご飯は食べろ」
エッ……。
「体は資本だ。体が弱っていると、心まで弱ることもある」
「はい。すみません」
何だか、高橋さんに心配ばかり掛けてしまっていて、それが哀しくて、悔しくて涙が溢れていた。
「泣くな」
高橋さんに言われて黙って頷いているが、噂のことや黒沢さんや紺野さん達から言われたいろんなことが思い出されて涙が止まらなくなってしまった。
「そんなに泣いてばかりいるんだったら、美味しいケーキ買ってきたけど持って帰るかな」
「えっ?」
右手の甲で頬を伝う涙を慌てて拭って見ると、高橋さんがシューズボックスの上に置いた紙袋の中を覗き込んでいた。
「あ、あの……」
「お前、現金な奴だな。ケーキと聞いて泣き止んだのか?」
そう言うと、高橋さんが悪戯っぽく笑った。
「えっ? えっ? あっ。い、いえ、そんなことないですよ。絶対そんなことないです」
「フッ……。まあ、いい。泣きやんでくれんだったら、それで」
高橋さん……。
ハッ!
ずっと、玄関に立ちっぱなしのまま話していたことに、今頃気づいた。
「あっ。すみません。こんなところで……。あの、良かったら上がって……キャッ……」
後ろを振り返った途端、先ほどシューズボックスから出したスリッパのつま先部分を左足で踏んでしまい、尚かつ、その左足で踏んだスリッパに右足を突っ込んでしまったものだから、身動き取れずに足がもつれて床に前のめりに倒れてしまった。
ああ。きっと、顔面を打ち付ける!

