新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

エッ……。
「そ、そうでしたっけ?」
「そうでしたよ」
うわっ。
即答されちゃった。
そうだった。怪我をしていて、高橋さんの家に泊まる、泊まらないと言っていて、結局家に帰ったけれど、翌日、明良さんと一緒に此処に来て……。
サラダを作ろうと思っていると、野菜を冷蔵庫から高橋さんが出してくれた後、それから暫く高橋さんは無言になって、沈黙が続いてしまい会話がなかった。
あの頃から、少しは成長したのかな? 
何だか、あまり成長出来ていない気がするけれど……。
今、高橋さんは、黙ったまま何を考えているの? もしかして、私と同じように昔のことを思い出して……ミサさんのことを……。
いけない、いけない。私も、もっと大人にならないと。今のままでは、いつも高橋さんにおんぶに抱っこで、支えになるどころか支えてもらってばかりだもの。少しでも、高橋さんの負担にならないようにしないといけないのに。それでなくちゃ、とてもミサさ……。
「どうした?」
「えっ?」 
ハッ!
「いた……」
不意に高橋さんに話し掛けられて、驚いた拍子に切っていたキュウリから目を離してしまい、その途端、左人差し指を包丁で切ってしまった。
「大丈夫か? ちょっと、見せてみろ」
「だ、大丈夫です」
痛かったけれど、必死に堪えた。
高橋さんは、私の左手を持ってシンクの蛇口を捻ると、切ってしまった左人差し指を水で洗い流した。
「このまま、此処で待ってろ」
高橋さん……。
水で洗い流しながら言われたとおりにしていると、高橋さんがティッシュと輪ゴムを持ってきて、ティッシュで出血している部分を押さえながら指の付け根の方を輪ゴムで留めた。
「心臓より、上にあげとけ」
「はい……すみません」
そして高橋さんは、ポケットから携帯を取り出すと、何処かに電話を掛けていた。
「もしもし……ああ。悪いんだが、来る時に商売道具持ってきてくれ。えっ? 違う。此処に居るドジなお嬢さんが、包丁で指を切った。ああ、よろしく。じゃあ、後で」
ドジなお嬢さんって……