新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

あっ、そうだ!
「あの……」
「ん?」
ハッ!
高橋さんが、私の頭に自分の頬をつけたので、それだけでドキドキしてしまう。
「お話して下さい」
「話? 何の?」
高橋さんが、不思議そうな声で問い返した。
「何でもいいんです。その……」
「フッ……」
頭の上で、高橋さんが笑った気がする。
高橋さんに、笑われたのかも。
「駄目……ですか?」
「……」
やっぱり、駄目だよね。いきなり、何かお話して下さいって言われても、高橋さんだって困るだろうし……。それに、こんな幼稚なことに、高橋さんが付き合ってくれるわけないもの。
冷静に考えてみたら、言ったことを後悔した。
「前に、明良達とモルジブに行った時に……」
エッ……。
お話してくれるの? 高橋さん。
「潜るのに船から飛び込む時は、必ず背中から落ちて行くんだが……」
「えっ? 高橋さんも明良さんも、ダイビングされるんですか?」
「お前、黙って聞いてなきゃ、何時まで経っても眠れないだろう?」
「す、すみません……」
高橋さんに、額を人差し指で押された
「たまたま、その日は先に準備が出来ていた仁が、まさに飛び込もうとしていたら、思いっきり明良に肩を押されてさ」
「アッハ……明良さんらし……」
「相づち打ったら、駄目」
「ン、ン−ン……」
懲りずに話し掛けてしまって、高橋さんに唇を摘まれた。
「あ、あの」
「ダーメ! ほら、早く目を瞑れ」
うっ。
「ごめんなさい」
言われたとおりに、目を瞑る。
怒られちゃった。
高橋さんに、今度怒られたらきっともうお話してくれなくなってしまうと想像出来たので、大人しく黙って聞くことに徹した。
「だから、仁はゴーグルを押さえる暇もなくて、レギュレーターも咥え損なって落ちたもんだから、思いっきり鼻に水が入って最悪だったらしいんだ」
仁さん。可哀想……。
「それでも仁は、ああいう性格だから何時か忘れた頃に、必ず仕返しするだろうなとは思っていたが、案の定、次の旅行の時に仕返しとばかり、思いっきり明良を落としてた」
アハッ。
何となく、明良さんの姿が目が浮かぶ。
「でも、明良がいちばんダイビングが上手いから、仁ほど酷い目には遭わなかったみたいだが」
知らなかったな。