新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「えっ?」
オヤユビミドリイシ?
「な、何ですか? その、オヤユビミドリイシって」
聞いたこともないし、いったい何のことなんだろう?
「いや、その頭が似てる」
エッ……。
ハッ!
嘘。
しまった! カーラー巻きっぱなしだったんだ。
「い、嫌だ。ど、どうしよう。高橋さん。ちょ、ちょっと、見ないで下さい」
「見ないで下さいって、お前。その姿でドーン!と出て来られたこっちの方がインパクト強すぎて、夢に出て来そうだぞ」
そんな……。
「ちょ、ちょっと、すみません。待ってて下さい」
高橋さんを玄関に立たせたまま慌てて洗面所に逃げ込もうとしたが、行きかけた私の腕を高橋さんが掴んでいた。
「そのままでいい」
「で、でも……」
泣きそうだった。
恥ずかしいこんな姿を高橋さんに見られてしまって、どうしていいのか頭の中が真っ白になってしまっている。
「昼間の伝言、見なかったのか?」
高橋さん……。
「そ、それは、その……」
「用事があったのなら、それはそれで構わないが」
高橋さん。用事なんて、何もなかったの。
だけど……。
「いえ、何も用事は……なかったです」
「そうか」
「ごめんなさい。私……」
当事者でもある高橋さんに、噂のことは言ってはいけないことなんだと思う。
すると、高橋さんがシューズボックスの上に持っていた紙袋を置くと、私の髪のサイドに付いているカーラーの1つをゆっくり外してくれて、シューズボックスの上に外したカーラーも置いた。
「ん? どうした?」
優しい瞳でそう言いながら、高橋さんが逆サイドに付いているもう1つのカーラーを外してくれている。
「あの……私、今日は早く帰りたかったので、それで……」
そう言うと、高橋さんは外したもう1つのカーラーをシューズボックスの上に置くと、私の髪の毛のカールされた部分を左手の中指でなぞるように、クルッと一回転させた。
その仕草の静かな音が耳に直接聞こえてきて、思わず目を瞑ってしまっていた。
「お前、何に怯えてる?」
エッ……。