私が死にたいと言うと君は寂しそうな顔をする。
ダメともいいとも言わず、ただ悲しそうな顔をする。


私が苦しいと言うとぎゅーっと抱きしめてくれる。
大丈夫。大丈夫。
と私の身体も心も支えてくれる。


私が助けてと言うと必ず引っ張り出してくれる。
そして話を聞いてくれる。
途中区切ろうとせずゆっくりと私の話に耳を傾けてくれる。



そんな君と私の物語。


私が君にあったのはまだ物心つく前だった。いつも君がそばにいて、いつも君が私に微笑んでくれた。
その笑顔はきらきらと宝石のようだった。

その関係は高校に入っても変わらなかった。君と私は同じ高校に入学し、同じ道を歩いていた。

だけど、私だけ道を外してしまった。
私が進んでいた道はとても暗く辛いものだった。

どこで間違えたのだろう。
どこまでが正しかったのだろう。
その事ばかりを考えてしまっていた。



やがて私は学校に行けなくなった。



君は毎日のように来てくれた。

部屋のドアの前で君は言う。


今日はお菓子を持ってきたよ。
今日は見たがってた本を借りてきたよ。
今日はゲームを持ってきたよ。

学校の話とは程遠い私の好きなのことについて話してくれた。
でも私はこのドアを開けることが出来なかった。

毎日毎日この罪悪感で胸が押しつぶされそうになった。



そしていつからか私の口癖は

死にたい。

になっていた。




今日もいつも通り君が来た。
いつも通りきた君に私はドア越しで言った。



死にたいの。


と。


君は黙っていた。

少し経つとか細い声で言った。


僕には止めることが出来ない。
君が決めたことなら僕はなにもできない。

でもね、僕は君に死んで欲しくないよ。
君だけはずっと長生きして欲しかったよ。

今の君に僕のこの声は届かないかもしれないい。
でも、もし死んでしまうのなら死んでしまう前に君の顔が見たい。

最後に1度だけ。
君がこのドアを開けてくれる?








私はドアを開けられなかった。







そして、次の日から君は来なくなった。





母に聞いたが、

君は亡くなっていた。


私と話した最後の日。


あの日に学校の屋上から飛び降りたらしい。




理由はいじめだった。

君はずっといじめられていたのだ。

私に学校の話をしなかったのは私のためでもあり自分のためでもあった。

日に日に声が弱々しくなっていったのは限界が近ずいていたから。

あの日顔を見せてと言ったのは自分はもう死んでしまうから。



全てのことが分かってしまった。


道を外していたのは2人ともだった。
いや、2人とももともと違う道を歩いていたのだ。
同じ道なんて歩いていなかった。
なら最後くらいは同じ道を辿りたい。


君が飛び降りた1年後私も同じ場所で飛び降りる決断をした。






そのあとの話は誰にもわからない。