ひと駅分の彼氏

パジャマ姿のままで自転車に飛び乗って、勢いよく立ち漕ぎで前へ進み出す。


いつもの電車はすでに出てしまったから、次の駅から乗車するつもりで懸命に前へ進む。


真琴はすでにホームに立っているかもしれない。


人混みに紛れながら、私が乗る電車を待っているかも知れない。


そう思うと気持ちが焦り、ついサドルから足が滑ってしまう。


なんども自転車ごとこけそうになりながら、必死に駅にたどり着いた。


自転車を乱暴に投げ出して交通カードで改札を抜け、ホームへと走る。


パジャマ姿で走る私に多く人たちが目を丸くしていたけれど、それも気にならなかった。


ホームへと走りこんだタイミングで電車が到着した。


間に合った!!


必死に人混みをかき分けて前へ進み、どうにか乗車に成功した。


その時……。


私がいつも座っている席と、その隣の席だけがポッカリと開いていることに気が付いた。


電車内はすし詰め状態なのに、そこだけ先客のために用意されていたかのような……。


キュッ。


足音が空席へ近づいていく。


視線の先には青いスニーカーが床に擦れて音を鳴らしているのがわかった。


心臓が大きく跳ねる。