「あ、おかえり、蒼ちゃん」


玄関で、青さんのスニーカーが出迎えてくれたから、青さんが家にいるのはわかっていたのだけれど。


いつも、出迎えてばかりいたから、なんだか逆なのが新鮮、で。


リビングのドアを開けて、青さんのおだやかな笑い顔を見たら、どうしてなのか鼻の奥がツン、とする。


「どした、どした。蒼ちゃん、どした?」


そんな私の姿を見た青さんは、めずらしくおろおろしながら、私のもとへ駆け寄ってきてくれた。


どしたの?


重ねられた質問に、ついにほんの少しだけ、涙がながれてしまった。