「遅くまで学校にいたの?」

「そうなんだよね。
今日は日直だったからさ。

でも、遅く終わってよかったかも。」


「なんで?」と問いかける私を見て、
ふわりと笑うと彼はまっすぐな瞳で
こう言うんだ。


「キミとこうして、一緒に帰れてるから」


恥ずかしげもなく、
まっすぐなその言葉に顔が火照る。

不意を突かれ、
ドキドキと高鳴る心臓が
うるさくて仕方ない。

これは、
悠希くんのいつもの天然たらしだから……
と言い聞かせて、笑い返す。


「じゃあ、私もお買い物してて
正解だったかも。」

「え?」

「だって、悠希くんと一緒に帰れてるから」

「あははっ、真似したなぁー?」


少しだけ、ほんの少しだけ。

同じセリフを繰り返した時に、
悠希くんの顔が赤く染まっていた気がした。

だけど、今は夕暮れ時で
街全体は淡いオレンジ色のベールに
包まれている。

見間違えの可能性が高い。
きっと、気のせい。私の勘違い。