(まったく……)


 清香はチラリと崇臣を見た。
 崇臣は、まるで部屋の主かの如く、寛いだ様子で腰を下ろしている。

 現代ではほとんど着られることのない狩衣に、彼の醸し出す独特の和の雰囲気は、清香の目指すシンプルで大人可愛い部屋とは相容れない存在のはずだ。そう思うのに、妙にしっくりきていることが、清香は腹立たしかった。


「っていうか……今日って、車で来たのよね?」

「その通りだが」


 清香の問いかけに、崇臣は淀みなく答える。窓の外は、今日も雨が降り続いていた。BGMかの如く、ザーザーと雨音が鳴り響く。清香は窓の側へと向かいながら、チラリと崇臣を見た。


「だったら、別にここで待たなくても東條さんの気が済んだタイミングで、迎えに来たら良いだけよね?」

「俺もそう思う」

「だったらどうして、まだここにいる?」


 眉間に皺を寄せながら清香が崇臣に詰め寄った。崇臣は小さくため息を吐くと、チラリと部屋の外を流し見た。


「主とお前の妹の希望だ。無碍にもできん」

「……東條さん?」


 てっきり芹香のごり押しなのかと思っていたが、どうやらそれだけではないらしい。
 清香が首を傾げると、崇臣は憮然とした表情のまま目を瞑った。