「いやぁ……私、本を作るなら自分で何とかするし、それに……」

「そんなこと言わないで手伝ってもらおうよ!それに、東條君を待ってる間、崇臣さん暇だし」

(お?)


 つい先日まで芹香は、『東條さん』と、さん付けで呼んでいた。それが今日、君付けに変わっている。また少し、二人の関係が進展したのかもしれない。そんな期待が清香の胸に過った。


「って……東條さんが家にいらっしゃてるの?」

「うん!ミョウに会いに来たんだよ」


 芹香はそう言って、ニコニコと嬉しそうな笑顔を浮かべた。


(かっ!可愛いっ……!)


 そのあまりの可愛らしさに、清香はデレデレと眉を下げた。
 ミョウというのは、清香たちが小さいころから飼っている猫のことだ。
 マンチカンのメスで、ずんぐりむっくりしているが、大層愛らしい顔と仕草をしている。薙野家自慢の愛猫である。