「あっ、そうだ!」


 すると、何事を思いついたのだろうか。芹香はパンッと手を叩きながら、満面の笑みを浮かべた。


「ねぇ、これをさ、ちゃんと本の形にできたりしないかな?私、お姉ちゃんの本、欲しい!」

「へ?本って……このままでも十分…………」


 芹香の思わぬ言葉に、清香はギョッと目を見開いた。


「それはそうなんだけど……ほら、去年の文化祭の時にさ、お姉ちゃんの先輩が本を作ってたじゃない!」

「あぁ、あれ……」


 どうやら芹香は、清香の先輩が作っていた個人誌のことを言っているらしい。清香はこっそりと、眉間の皺を指で伸ばした。

 清香の所属する文芸部は、中々に長い歴史を持つ部だ。清香はよく知らないが、過去には商業作家を輩出したこともあるらしい。少し名の知れた、純文学作家だそうだ。とはいえ、時代の流れもあって、現在は純文学だけを取り扱う部活ではない。


(まぁ、文学ってのは、人それぞれ形が違うわよね)


 清香はしょっぱい顔をして笑いながら、どこか遠くの方を見つめた。