「ねぇ、何書いてたの?」


 芹香は首を傾げながら、清香のノートをそっと開く。清香は穏やかに微笑みながら、芹香の隣に立った。


「これまで撮った芹香の写真とか……綺麗な写真なんかの記事をまとめてるの。いつもSNSに載せてる奴より、分量なんかも増やしててね」

「へぇ~~~~」


 パラパラとページを捲りながら、芹香はキラキラと瞳を輝かせた。

 ノートにあるのは清香が子どもの頃からコツコツためてきた、宝物の様な日々の記録だ。
 清香と芹香の両親は昔から、忙しい人たちだった。平日帰宅するのは夜遅くで、授業参観に来てくれた記憶もあまりない。
 けれど二人は、仕事の合間をぬっては、清香たちをいろんな所へ二人を連れて行ってくれた。幼いながら、写真に興味を持った清香に、早くからカメラを与えてくれたのも両親だった。


「すごいよお姉ちゃん……これ、すごい!」


 ウットリと頬を染めながら、芹香がそう言った。清香はキョトンと目を丸くすると、はにかむように笑う。


(芹香に褒められた!)


 あまりの嬉しさにノートを天井に掲げながら、清香はクルクルとその場を回った。天にも昇る気持ちとはこういうことを言うのだろう。プリーツの裾を靡かせながら、蕩け切った顔で笑う清香を見て、芹香がクスクスと笑った。