その日から、芹香と東條のメールでのやり取りが始まった。

 起き抜けの挨拶からおやすみまで……とまではさすがにいかないようだが、二人は頻繁に連絡を取り合っているらしい。清香はそれが嬉しかった。

 何故なら、前世の芹香と東條も、細やかに手紙でやり取りを交わしていたのだ。

 昔は、夫婦と言えど常に居所を共にしているわけではない。特に帝には数人の女御がいることが当たり前だったため、時には数日会えぬまま、やり取りは手紙頼りというときもある。


(昔は手紙と言えば、花がつきものだったんだけどねーー)


 ふとそんなことが清香の頭に過った。

 清香が前世を生きた時代、手紙は今よりも重要な役割を持っていた。手紙そのものが書き手の人物を表すといっても過言じゃなかったのだ。
 筆跡、墨の具合、紙に焚き染めた香のひとつで、貰い手は相手の身分や教養をはかることができる。逆に言うとそこを押さえておけば、相手に好印象を与えることができたのだ。

 さて、そんな中で花が担う役割が何かというと。