薙野清香の【平安・現世】回顧録

 立花が清香を連れてきたのは、店の近くにある公園だった。
 夏の公園にありがちな、雑草がボウボウと生い茂った状態ではなく、きちんと手入れが行き届いている。夏の草花が美しく咲き誇っているのも高評価だった。


「良い公園だろう」

「えぇ」

「清香ちゃん、こういうとこ好きそうだなぁって思ってさ」


 立花はそう行ってニカッと笑う。
 清香は穏やかに微笑むと、木陰のベンチへと腰掛けた。


「それで、ここに連れてきた理由なんだけど……単刀直入に言うとね、俺は清香ちゃんと付き合いたい」


 立花はベンチに座らず、まるで清香に跪くかのようにして顔を覗き込んだ。いつも無駄に笑顔なその顔が、今は少しだけ強張っている。


「まだ知り合ったばかりだけどさ、俺たちが出会ったのは運命なんじゃないかなって、そう思うんだ」


 立花はそう口にすると、黙って清香を見つめ続けた。
 セミたちの鳴き声が、不自然な沈黙を少しだけ緩和してくれる。清香は深呼吸をしながら、ゆっくりと立花に向き直った。


「……私も、立花さんと出会えたことは運命だと思います」


 清香がそう言うと、立花の表情がみるみる明るく輝いていく。