「宮様は――――宮様は確かに晩年、お苦しい身の上でした。お父上やお兄さま方の後ろ盾を無くし、東條さまはもう一人中宮を迎えられ、華やかだった生活は一変してしまった……。けれど宮様は、それでも幸せでした!」
ぐしゃぐしゃで見苦しい清香の顔を、東條が真っすぐに見つめている。けれど、見た目など、今はどうでも良かった。
(伝えなくちゃ。宮様の想いを)
胸に手を当てながら、清香が東條へと向きなおる。東條の瞳は真っ赤に染まり、今にも泣きだしそうな顔をしていた。
「東條さまが愛してくださったから! それをご存じだったから! 宮様はずっと、最後の最後まで……幸せでした!」
清香の涙と共に、幸せだった前世の主人との思い出が溢れ出す。
どの瞬間も――こと切れるその時まで、前世の芹香は、ずっと笑顔だった。
「だから……だからっ…………!」
「……ありがとう、右近」
両手で顔を覆いながら東條が言う。彼の身体は小刻みに震えていた。
どれぐらい時間が経っただろう? 東條がゆっくりと顔を上げる。それは、凛々しくて美しい、かつてこの国の頂点に立った男の顔だった。
ぐしゃぐしゃで見苦しい清香の顔を、東條が真っすぐに見つめている。けれど、見た目など、今はどうでも良かった。
(伝えなくちゃ。宮様の想いを)
胸に手を当てながら、清香が東條へと向きなおる。東條の瞳は真っ赤に染まり、今にも泣きだしそうな顔をしていた。
「東條さまが愛してくださったから! それをご存じだったから! 宮様はずっと、最後の最後まで……幸せでした!」
清香の涙と共に、幸せだった前世の主人との思い出が溢れ出す。
どの瞬間も――こと切れるその時まで、前世の芹香は、ずっと笑顔だった。
「だから……だからっ…………!」
「……ありがとう、右近」
両手で顔を覆いながら東條が言う。彼の身体は小刻みに震えていた。
どれぐらい時間が経っただろう? 東條がゆっくりと顔を上げる。それは、凛々しくて美しい、かつてこの国の頂点に立った男の顔だった。



