薙野清香の【平安・現世】回顧録

「ねえ右近、最近俺は思うんだ。もしもあの時、俺がもっとしっかりしていたら……もっともっと俺に力があったら、中宮は死なずに済んだんじゃないか……って」


 どこか遠い目をしながら東條がポツリと漏らす。

 兄たちが相次いで失脚し、後ろ盾がなくなった前世の芹香は、出産に向けて心が弱っていた。
 東條のもう一人の中宮――前世の暁の影響もあり、満足に医師に診てもらうことも難しかった。
 もしも前世の芹香にきちんとした後ろ盾があったら。せめて医師に診てもらえていたら。もっと芹香のもとに通えていたなら――――そんなふうに思ってしまうのは致し方ない。


「もしかしたら宮は、俺と一緒じゃなかった方が、幸せになれたんだろうか」

「そんなことはございません!」


 気づけば清香は大声で叫んでいた。堪えきれず、大粒の涙が頬を伝う。
 東條は、驚いたように目を見開いていた。