薙野清香の【平安・現世】回顧録

「だったら、芹香も一緒に……」

「それはダメよ」


 芹香はきっぱりとそう言い放つ。
 穏やかながら明確な意思を持つ、凛とした声だ。


(宮様……)


 清香の脳裏に前世の主人――――中宮の姿が浮かび上がる。清香は思わず頭を垂れた。


「東條君がお姉ちゃんと二人で話したいって言ってるんだもの。私が一緒じゃ意味が無いでしょう?」

「でも……」


 東條の前世の身分や、今の芹香との関係を考えれば、清香が気後れしてしまうの致し方ないことだろう。
 遊園地で思いがけず二人きりになった時だって戸惑ったし、相当緊張したのだ。それなのに、呼び出されるとなると――――。

 芹香はまるで妹を扱うかのように優しく清香の頭を撫でると、そっと微笑んだ。


「大丈夫。東條君と話をして、もしもお姉ちゃんがそれを一人で抱えきれなかったら……その時は私に教えて? 私が一緒に抱えるから。
それにお姉ちゃんは話してくれないだろうけど……本当は私、お姉ちゃんに相談してほしいって、そう思ってるんだよ」

「芹香……」


 芹香はそう言って目を細める。そのあまりの美しさに、清香は思わず息を呑んだ。