薙野清香の【平安・現世】回顧録

(全くひどい目にあった)


 自室のベッドに身体を投げ出しながら、清香は深々とため息を吐く。


 あの後すぐ、崇臣は東條たちに連れられて店を出た。
 立花も、何か言いたげな眼差しを清香に向けていたものの、有耶無耶にしてくれたのはありがたい。

 一人店に残った清香は半ば放心状態のまま、残りのバイト時間をひたすら自問自答に費やした。店主には悪いが、その日他の客が来なかったのは幸いだった。


(私、最低だな)


 清香はお気に入りの抱き枕を胸に、ベッドの上をゴロゴロと何度も往復する。
 何の結論も出せないまま、全てをなぁなぁにして逃げた自分が許せない。脳裏には崇臣と立花、両方の顔が浮かび上がった。


(変なの。こんなに優柔不断じゃなかったはずなのに)


 清香は両手で目を覆う。目頭が熱い。じわりと手のひらがすぐに濡れてしまった。
 まるで靄が掛かったかのよう――――清香には自分の心が見えずにいる。


(これからどうしよう?)


 答えがちっとも分からない。清香はすっかり途方に暮れてしまった。