薙野清香の【平安・現世】回顧録

(無理ッ! 居た堪れない! これ以上崇臣の顔見れない)


 絶妙に視線を彷徨わせながら、清香は何度も瞬きを繰り返す。


「さっ、さぁ~~~~? おじさん……店主に聞いてみないと何とも。店番を任されている以上、勝手にお店をお休みにするわけにはいかないし」


 何とか回答を先延ばしにしたくて、清香は店主を引き合いに出す。
 本当は店主からは、休みたい日は好きに休んでいいと言われていた。だが、この二人にはそんなことはとても言えない。あまりの申し訳なさに、清香の良心がズキズキ疼く。

 とはいえ、崇臣と向き合おうと決めたその矢先に、前世の夫と出会ってしまったのだ。戸惑わずにはいられない。
 これから自分がどうしたいのか、どうして行けばいいのか――――その答えを出すには時間が必要だった。


「だったら連絡先を交換しよう! それで、清香ちゃんの都合のいい日を連絡してくれたらいいから、ね!」

「えっ!? 連絡先……そうか、連絡先を、ね…………」


 書店の中はエアコンが程よく効いていて涼しい。けれど清香は今、ダラダラと脂汗をかいていた。背中にシャツが張り付いていて気持ちが悪い。あと数分もこの状態が続けば、本当に具合が悪くなりそうな勢いだった。