薙野清香の【平安・現世】回顧録

 どうして崇臣がそんなことを口にしたのか――――考えるまでもない。清香と崇臣との年齢差を――――年齢差によって二人が恋愛対象とならないことを指摘するような、立花の先のセリフを明確に否定するためだ。


(どうしよう。あれから時間も経つし、崇臣の気持ちが変わってるんじゃないか、なんて思ってたけど)


 先程からずっと、崇臣は真っすぐに清香のことを見つめていた。嬉しさと戸惑いの綯交ぜになった心のまま、清香はそっと目を瞑る。なんと返せば良いのかちっとも分からない。

 立花は清香たちを見遣りながら軽く眉を上げると、少しばかり含みのある笑みを浮かべた。


「ところで清香ちゃん。さっき話していた水族館、いつなら行ける?」

「…………へ?」


 立花の言葉に、清香は思わず口をあんぐりと開けた。


(今!? このタイミングでどうしてそんなことを聞くの!?)


 慌てふためく清香を余所に、崇臣は眉間に皺を寄せながら、立花のことを睨みつける。先ほどよりも不穏な空気が店内いっぱいに漂った。