薙野清香の【平安・現世】回顧録

「東條さんのお父さまの会社で働いてる崇臣……さん。狩衣なんて着てるし、少し変わった所があるけど、根は良い人よ」


 清香がそう紹介すると、崇臣は不服気に目を細めた。


(なっ、何よ……本当のことじゃない!)


 ありのままを紹介しただけだと言うのに、何がそんなに気に食わないのだろう? 清香はそっと唇を尖らせた。


「へーー。二人は結構仲が良いの?」


 立花は清香と崇臣を交互に見ながら、ニコニコと笑顔を浮かべている。
 返事をしようと口を開いた崇臣を遮り、清香は思わず声を張った。


「全っ然! 寧ろいつもケンカしてるというか、小ばかにされてるというか。崇臣からしたら私はガッツリ年下の妹みたいな存在みたいで……」


 何故だろう。口が勝手にペラペラと動く。
 視界の端に映る崇臣の表情が何やら険しくなった。


「とっ、東條君! あっちの棚を覗いてみない?」

「……そうだね」


 不穏な空気を察した芹香は、東條を連れてそそくさと店の奥へと引っ込んでしまう。すると、主のいなくなった崇臣が、ツカツカとこちらへ詰め寄って来た。