薙野清香の【平安・現世】回顧録

「お姉ちゃんの様子を見に来たんだよ」


 芹香はそう言って朗らかに笑う。
 けれど、すぐに清香の隣に座っている立花を見て、パッと口を噤んだ。


「……っご、ごめんなさい! 他にもお客さんがいたのに、私ったら」

「俺のことなら大丈夫。清香ちゃんの妹さんと……彼氏さんかな? 可愛いカップルだね」


 立花は豪快な笑みを浮かべながら、その場にゆっくりと立ち上がる。
 芹香は立花の人懐っこい言動に一瞬驚いたようだが、すぐに聡明な笑みを浮かべ、丁寧に頭を下げた。


「清香の妹の、薙野 芹香です。こっちは彼氏の東條君」

「東條です」

「初めまして。俺はここの常連客で、立花っていうんだ。よろしく」


 ペコリと腰を直角に折り、立花が綺麗なお辞儀をする。