「私も……ずっと昔から、立花さんのことを知っている……そんな気がします」
さすがに全く返事をしないのは感じが悪い。清香は慎重に言葉を選びつつ、そう答える。
本当は『前世で夫婦でした』と話してしまえば楽なのだろう。
けれどそんな話、普通は信じられるはずもないし、清香自身話すつもりはない。
「そっかそっか! もしかしたらさ、運命の赤い糸で結ばれてるのかもな、俺たち」
そう言って立花は、ニコニコと機嫌よさげに笑う。
(本当、少し前までは私もそう信じて疑わなかったのに)
清香は現実から目を背けるかの如く、ゆっくりと瞳を閉じる。すると、崇臣の憮然とした表情が脳裏に浮かび上がってきた。
(……莫迦だなぁ。やっぱり運命ってのは存在していたんだ)
考えながら、目頭がジワリと熱くなる。
上手くいくと分かっている道があるのなら、そちらへ進む方が楽だろう。誰だって、困難はできる限り避けて通りたいし、幸せになりたいと願っている。
けれど清香は、運命の分岐点を無理な方向に進もうとした。
他に運命の相手がいると分かっていながら、別の人を――――崇臣の手を取ろうとしたのだ。
そのせいで今、清香は自分でも形容できない、複雑な心境に陥っている。
さすがに全く返事をしないのは感じが悪い。清香は慎重に言葉を選びつつ、そう答える。
本当は『前世で夫婦でした』と話してしまえば楽なのだろう。
けれどそんな話、普通は信じられるはずもないし、清香自身話すつもりはない。
「そっかそっか! もしかしたらさ、運命の赤い糸で結ばれてるのかもな、俺たち」
そう言って立花は、ニコニコと機嫌よさげに笑う。
(本当、少し前までは私もそう信じて疑わなかったのに)
清香は現実から目を背けるかの如く、ゆっくりと瞳を閉じる。すると、崇臣の憮然とした表情が脳裏に浮かび上がってきた。
(……莫迦だなぁ。やっぱり運命ってのは存在していたんだ)
考えながら、目頭がジワリと熱くなる。
上手くいくと分かっている道があるのなら、そちらへ進む方が楽だろう。誰だって、困難はできる限り避けて通りたいし、幸せになりたいと願っている。
けれど清香は、運命の分岐点を無理な方向に進もうとした。
他に運命の相手がいると分かっていながら、別の人を――――崇臣の手を取ろうとしたのだ。
そのせいで今、清香は自分でも形容できない、複雑な心境に陥っている。



