「先日、清香がこの時代に関する似たような書籍を読んでいただろう?」

「……! えぇ、まぁ」

 
 恐らく崇臣は、先日一緒に図書館に行った時のことを言っているのだろう。『何、何?』と興味津々で覗き込んでくる紫の視線がとても痛い。清香は必死に知らんふりをした。


「お前がそこに何を見ようとしているのか、知りたくなったのだ」


 崇臣はそう言って、穏やかに微笑む。
 まるで愛しいものを撫でるかの如く、彼は本の表紙をそっと撫でた。


(何か……普通に好きって言われるより、ドキドキする気がするんですけど)


 心臓がドキドキと鳴り響く。頬を紅く染めながら、清香は崇臣からお代を受け取った。


「それに、実は主も、昔から平安時代に興味がおありなのだ」

「……東條さんが?」


 清香はそう言って思わず紫を見た。


(もしかして、東條さまにも記憶が?)


 紫は清香の意図を察したのだろう。フルフルと首を横に振った。