「ところで、崇臣は今日、休みなの?」


 ふと気に掛かり、清香が尋ねる。


「いや。主の父親の遣いで出掛けていたところだ」


 崇臣は、腕時計をチラリと見ながらそう言った。やはり、仕事の途中らしい。


「……だったら、もう行かなきゃなんじゃない?」

(本当はもう少しいてほしいんだけど)


 素直にそう言えばいいものを、清香はどこまでも意地っ張りだ。そんな自分を腹立たしく思いつつ、清香はそっと崇臣を見上げる。


「まぁな。だが、もう少しぐらい休憩しても良いだろう? いわゆる熱中症対策、というやつだ」


 ふっと小さく笑いながら、崇臣は清香の頭をクシャクシャと撫でた。
 清香の心臓がトクトクと鳴る。ふと、目を細めて笑う崇臣と目が合った。


(あぁーーーーもうっ)
 

 頬が熱い。パタパタと手を振り、火照った熱を必死に冷ます。

 すると崇臣は、満足そうな表情でクルリと踵を返した。何をするのかと思えば、店の入り口近くにある棚を覗き込んでいる。どうやらある程度長居をする気らしい。