「上げるって言ったでしょう?」


 紫は唇をわななかせつつ、声を荒らげてそう言った。心なしか頬が紅く染まっている。清香は小さくため息を漏らした。


「いらないわ。あなたに関わり合うと面倒なのよ。下手な繋がりは持ちたくないの」


 僅かな沈黙。紫は瞳を釣り上げ、ギュっと拳を握った。


(まっ、まさか暴力!?)


 清香が思わず身を竦ませる。けれど、紫の拳が飛んでくることはなかった。
 代わりに紫は、至極悔し気に顔を歪ませて、清香のことを見つめている。


「あなたは……! あなたって、いっつもそう! 中宮様や主上、中将のことばかり! それ以外には興味ないって感じで澄ましていて、私にはちっとも興味を持ってくれないんだもの‼ 私は! 私の作品は……あなたに見向きもされないの!」


 紫はそう言って顔をクシャクシャに歪めた。


(……ん? 紫の作品?)


 清香はそっと首を傾げる。よく聞けば、何となく引っ掛かりのある発言だ。