(私、やっぱり本が好きだなぁ……好きなんだよなぁ)
紙を捲る感触も、独特の香りも、ワクワクやドキドキが詰まっている所も、そのすべてが好きなのだと清香は再確認できた。
近頃はデジタル書籍も多く好まれているが、紙独自の良さというのは間違いなくある。これから先もずっと残ってほしい――清香はそう強く願った。
(……将来、か。本当、良い機会だったのかも)
日に焼けたページをパラパラと捲りながら、清香が微笑む。
崇臣に出会うまで清香は、芹香のことを愛でるだけの小娘だった。ただ芹香を追い、崇めるためだけに存在していた。あのままいけば清香はきっと、芹香を愛しながら年を重ねるだけの人生を送ったことだろう。
(まぁ、本当はそれも悪くはないんだけど)
他ならぬ芹香が『それじゃダメ!』だと訴える様子が目に浮かぶ。清香はウットリと目を細めた。
その時、チリンチリンと来客を告げるベルが鳴る。久しぶりの客らしい。
「いらっしゃいませ」
店の雰囲気を崩さないよう気を配りながら、清香が声を掛ける。けれど、来店者の姿を確認したその瞬間、清香の余所行きの笑顔がピシリと固まった。
「――――どうも」
一方、客の方は清香がここにいると知っていて、わざわざ来店したらしい。ほのぼのとした空間の中に流れ込む禍々しい空気に、清香はぶるりと身体を震わせる。
(藤式部……!)
そこには清香のかつてのライバル、藤式部こと紫が、ふてぶてしい表情を浮かべて佇んでいた。
紙を捲る感触も、独特の香りも、ワクワクやドキドキが詰まっている所も、そのすべてが好きなのだと清香は再確認できた。
近頃はデジタル書籍も多く好まれているが、紙独自の良さというのは間違いなくある。これから先もずっと残ってほしい――清香はそう強く願った。
(……将来、か。本当、良い機会だったのかも)
日に焼けたページをパラパラと捲りながら、清香が微笑む。
崇臣に出会うまで清香は、芹香のことを愛でるだけの小娘だった。ただ芹香を追い、崇めるためだけに存在していた。あのままいけば清香はきっと、芹香を愛しながら年を重ねるだけの人生を送ったことだろう。
(まぁ、本当はそれも悪くはないんだけど)
他ならぬ芹香が『それじゃダメ!』だと訴える様子が目に浮かぶ。清香はウットリと目を細めた。
その時、チリンチリンと来客を告げるベルが鳴る。久しぶりの客らしい。
「いらっしゃいませ」
店の雰囲気を崩さないよう気を配りながら、清香が声を掛ける。けれど、来店者の姿を確認したその瞬間、清香の余所行きの笑顔がピシリと固まった。
「――――どうも」
一方、客の方は清香がここにいると知っていて、わざわざ来店したらしい。ほのぼのとした空間の中に流れ込む禍々しい空気に、清香はぶるりと身体を震わせる。
(藤式部……!)
そこには清香のかつてのライバル、藤式部こと紫が、ふてぶてしい表情を浮かべて佇んでいた。



