美玖というのは、清香の三歳年下の、父方の従妹である。年齢差の大きな清香とはあまり接点がないものの、芹香との仲は良い。また何の因果か、少しだけ芹香に面差しが似ていた。


(って……あれ?っていうか、これまで気にしたことなかったけど……)


 よくよく見れば、面差しが似ているだけではない。美玖は清香の知る誰かによく似ていた。清香自身の記憶ではない。もっともっと、遠い昔の記憶だ。


(まさか!)


 清香の顔から生気が一気に無くなった。不安と動揺から瞳孔は大きく開き、カタカタと身体が震えあがる。


(どうしよう、どうすれば…………)


 震えの止まらない身体を抱き締めながら、清香は恐る恐る顔を上げた。少し離れた所で、芹香と東條、美玖の三人が仲睦まじそうに微笑み合っている。それだけではない。美玖が何かを話し掛ける度に、東條が楽しそうに声を上げて笑った。


(ダメ!美玖と東條さまは出会ったらいけなかったのに!)


 清香の頭の中で、ガンガンと警報が鳴り響く。割れそうに痛む頭を抱え、清香はそっと目を瞑った。