「私はただ……お姉ちゃんに幸せになってほしいだけ」
そう言うと芹香は、怒っているというよりも寧ろ、悲しそうな表情を浮かべた。清香の心がズクンと痛んだ。
「芹香……」
ダブルデートを取り持ってくれた時も、芹香は確かに『清香に幸せになってほしい』と、そう言っていた。本当に清香のことを思って、崇臣とのことを後押ししてくれていたのだろう。清香の顔に笑みが広がった。
「ねぇ芹香、私は今でも十分幸せなのよ?」
そう言って清香は芹香の隣に座ると、そっと手を握る。
(あなたは覚えてないだろうけどこれ……前世で芹香が私に言ってたことなんだよ?)
そんなことを思いながら、清香は思わず苦笑してしまう。
中宮という立場でありながら、父を病で、兄を政敵の陰謀で失った後の芹香は、それまでの華やかな生活とは打って変わって、寂しい生活を余儀なくされた。
以前賜っていた豪奢な殿舎ではなく、別の場所へと身を移さねばならなかったし、たくさんの従者たちに暇を出さなければならないという、それはそれは心細い日々であった。
けれど中宮は笑顔を絶やさなかった。いつも“私は幸せだ”と口にし、清香たち女房にも“いつも笑顔でいるように”と、そう話して聞かせていた。そんな中宮を帝は愛し、人目を忍びながらではあったが、密かに通い続けたのだ。
そう言うと芹香は、怒っているというよりも寧ろ、悲しそうな表情を浮かべた。清香の心がズクンと痛んだ。
「芹香……」
ダブルデートを取り持ってくれた時も、芹香は確かに『清香に幸せになってほしい』と、そう言っていた。本当に清香のことを思って、崇臣とのことを後押ししてくれていたのだろう。清香の顔に笑みが広がった。
「ねぇ芹香、私は今でも十分幸せなのよ?」
そう言って清香は芹香の隣に座ると、そっと手を握る。
(あなたは覚えてないだろうけどこれ……前世で芹香が私に言ってたことなんだよ?)
そんなことを思いながら、清香は思わず苦笑してしまう。
中宮という立場でありながら、父を病で、兄を政敵の陰謀で失った後の芹香は、それまでの華やかな生活とは打って変わって、寂しい生活を余儀なくされた。
以前賜っていた豪奢な殿舎ではなく、別の場所へと身を移さねばならなかったし、たくさんの従者たちに暇を出さなければならないという、それはそれは心細い日々であった。
けれど中宮は笑顔を絶やさなかった。いつも“私は幸せだ”と口にし、清香たち女房にも“いつも笑顔でいるように”と、そう話して聞かせていた。そんな中宮を帝は愛し、人目を忍びながらではあったが、密かに通い続けたのだ。



