「崇臣がどうしたの?」

「えっと……最近連絡とってるのかな?って」

「別に?あ の後、崇臣抜きでも本はちゃんと完成したし。あっちからはたまにメールが来るけど、私は別に用もないし」

 あまりに気のない清香の返しに、芹香は不満げに唇を尖らせた。


「返信しなよ!崇臣さん、きっとお姉ちゃんのメール待ってるよ」

「……待ってはいるのかもしれないけど」


 清香はそう言って芹香からそっと視線を逸らした。

 正直清香は今、あの男と積極的に関りを持ちたくなかった。
 芹香と東條は晴れて交際を始めたのだし、これから清香がせねばならないのは紫の妨害を阻止するだとか、二人の仲を見守るだとか、そういったことで良いのである。これまでのように崇臣とつるむ必要も殆どないだろう。


「お姉ちゃんってそんなに頑固だったっけ?」


 思わぬ言葉に清香が顔を上げる。どうやら本気で怒っているらしい、芹香が眉間に皺を寄せて清香を見つめていた。


(芹香……)


 清香の心が小さく軋む。こんな芹香の表情を見るのは久しぶりだった。


「……頑固じゃダメかな?」


 芹香に嫌われたくはない。だから清香はそう尋ねた。
 けれど本当は、この件については引く気もなかった。