薙野清香の【平安・現世】回顧録

「ちょっと!それ、私の!」

「清香がぼーーっとしているのが悪い」


 清香がフォークを握る手を、上から大きな手のひらが包んでいる。じわりと広がる温もりが、清香の心を乱した。


「だっ、だからって取ることないでしょ!それに、私はぼーーっとなんかしてない」

「してた」

「してないーー!」


 意地悪い笑みを浮かべた崇臣に、清香が抗議を続ける。腹立たしさに拳を強く握り、語気には熱がこもる。
 すると、反対側からクスクス、と小さな笑い声が聞こえてきた。芹香と東條だ。二人とも、楽しそうに口許を押さえながら、清香たちを見つめている。


(いけない!私ったら……)


 急激に襲い掛かる羞恥心に、清香はそっと頬を染めた。


「お姉ちゃんたち、仲いいよね。こんなお姉ちゃん見るの、私初めて!新鮮だなぁ」


 芹香はそう言って、穏やかに微笑んだ。


「そっ、そんなこと……」


 そう口にしながら、清香の表情が曇る。