リムジンの後部座席に座る俺たち。


真ん中には涙を流しながら眠っている聖奈がいる。その涙は次から次へと溢れてとまらない。


緊張から解放されて寝ているだけなんだろうけどその姿が今にも壊れそうで儚い。



「聖奈ちゃん……」



左隣に座る柚月はこの状況にも関わらずちゃっかり聖奈の頭を自分の肩に乗せて愛おしそうに見つめてるし。


それを見てさらにイライラする。



「ちっ。お前に聖奈は渡さない」


「あっ!ちょっと!」



柚月を人睨みしてから、聖奈の頭を俺の肩にのせた。肩に心地よい重みを感じながら、俺はとまらない涙をそっと人差し指で拭う。


怖かったな……もう、聖奈に悲しい思いはさせないからな。



「兄さんのいじわる!僕の聖奈ちゃん返して!」


「うるさい。騒ぐな」



小さくて柔らかい手を包み込むようにして、そっと握る。柚月ばっかり甘えてんじゃねぇよ。


俺にも甘えろよ……。