暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

翌日。
得意でないお酒を飲んでしまった私は体調も最悪。
午前中いっぱい社内会議が入っていた副社長は席を空けていて、私はその間に溜まっていた事務処理作業を進めていた。

そこにかかってきた一本の電話。
それは白鳥綾香さんからのものだった。

『もしもし坂本さん?』
「はい」

『昨日は偶然だったわね』
「ええ、ご挨拶もできずにすみません」
お互い連れがいて声もかけられなかったことを詫びると、
『いいのよ。私達も絵画展の後で食事に寄ったの。坂本さんもデートだったの?』
「いえ、私は・・・」

圭史さんとはそんな関係ではない。と言いそうになったけれど、やめた。
わざわざ電話で話すことでもないように思えた。

「ご一緒だったのは龍ヶ崎建設の圭史さんでしょ?」
「ええ。たまたま以前からの知り合いでして」
「そうなのね。私も、父が創介さんを気に入っていてぜひ婿に何て言うものだから、時々お食事にお誘いするの」
「そうですか」

うすうす気付いてはいたけれど、やっぱりそう言うことか。

「創介さんもああいう方だからなかなか本心をおっしゃらないけれど、私たちは付き合っているの。だから、坂本さんにもその点をご承知いただきたくて」

これは手を出すなって牽制。
もちろんその気はないけれど、必要以上に近づくなってことだろう。

「承知いたしました」
他に返事が見つからず、私はそう答えていた。