暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

「ここ、ですか?」

圭史さんの車で迎えに来てもらい、連れてこられた都心のビル。
確か数か月前にできた複合型の施設で、一条コンツェルンが建設にかかわっていたはず。
地下鉄の駅を中心に二棟の大きなビルが立ち、それを繋ぐように回廊が張り巡らされている。その建物の最上階に私は連れてこられた。

「いい所だろ?」
「ええ」

大きな窓から見えるのは都心のパノラマで、まさにここは空中都市。
現実を忘れてしまいそうな空間がここにはある。

「ここのレストランは本場仕込みのフレンチだから、味も絶品なんだ」
「へえー、すごいですね」

私でさえ名前を聞いたことのある星付きの名店に多少分不相応な気もするけれど、せっかくだから楽しもう。
こんなチャンスは二度とないかもしれないし。

「いらっしゃいませ、龍ヶ崎様。お待ちしておりました」
店の入口まで到着すると、男性スタッフがすぐに表れた。

「ご案内いたします」

ここは行きつけの店だろうか。
さっきからすれ違うスタッフたちが頭を下げていく。

「望愛ちゃん、こっちだよ」
「ああ、はい」

店内の雰囲気にのまれ足が止まった私は、数歩先で振り返り待ってくれる先輩に呼ばれ足を速めた。
その時、

え、嘘。
出かかった言葉を必死で飲み込んだ。