暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る～花嫁候補のようですが、謹んでお断りします～

「こんにちは創介さん」
「いらっしゃい、綾香さん」

珍しい、若くて女性のお客様。
副社長も不機嫌な様子がなく、淡々と対応している。

「いらっしゃいませ」
「こんにちは」

えっと、初めて見る顔だけけれど・・・
副社長の反応からして知り合いらしい女性。
年はかなり若そうで、どう見ても20代前半。
肩を超えるくらいに伸びた明るいブラウンの髪は綺麗に巻かれていて、お化粧もばっちり。
服もバックもブランド品で、見るからにお金持ちのお嬢様。
一体どなただろう。

「新しい秘書さんかしら？」
「はい、坂本と申します」
「私、白鳥綾香です」

白鳥・・・
ああ、うちのメインバンクである東京銀行の頭取が白鳥さんだったはず。
ってことは・・・

「綾香さんは白鳥頭取のお嬢さんだ」
考え込んでいる私に副社長が教えてくれた。

「それは、存じ上げませんで失礼しました」
「いえ、お気になさらないで」

ニッコリとほほ笑みながら私の頭からつま先までに視線を走らせる綾香さん目が、値踏みするようでちっとも笑っていない。

「コーヒーをお持ちします」
「ああ、頼む」

その場に居づらさを感じた私は、副社長室を出た。