暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

その日の午後、私も副社長も夕方からの京懐石に向けて順調に仕事をこなしていた。
今日行くのは都内では珍しい本格的京懐石のお店。
本店は京都の鴨川沿いにあり、有名人著名人が集う老舗。
都内のお店も当然一見さんはお断りで、そう簡単に行くことができない場所だ。

「やはり着替えて行った方がいいですか?」

今日はシンプルなブラウスとタイトなスカート。薄手のジャケットを羽織った格好で、いかにも仕事着に見える。
みっともないとは思わないけれど、せっかくいいお店に行くのなら少しオシャレをした方がいいのだろうか。

「別にそのままでもかまわないが、着替えるならそれでもいい。今のままだと仕事をしているような気分になるからな」
「そうですね。わかりました」

更衣室にワンピースを置いてあるからそれに着替えよう。
私もその方が楽で動きやすいし。

その時、
ブブブ ブブブ。
執務室の内線が鳴った。

「はい、副社長室です」

それは副社長を尋ねる来客の知らせだった。