暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

「それと朝の女性のことだけれど、」
「ああ、龍ヶ崎夫人ですよね?」
「うん。副社長にとっては実の叔母さんに当たるんだが、あまり関係がよくなくてね」
なんだか言いにくそうに言葉を濁す課長。

どうやら何か事情がありそう。

「あまり細かいことまでは言えないんだが、夫人にも副社長と同い年の息子がいて、彼を一条の跡取りにしたいって思惑があるんだ。実際この20年ほどの間息子をなくして失意の中にあった会長を支えてきたのは龍ヶ崎夫人だから、思うところもあるのだろう。だからというわけじゃないが・・・」

きっと、今日のことは忘れてほしいと言いたいんだろうな。
その苦しそうな表情を見れば大体わかる。

「大丈夫です。気にしていませんし、もう忘れました。私忘れっぽいので」
へへへと笑って見せると、課長はホッと息をついた。

どんなにお金持ちの家でも、それぞれ家庭の事情はあるらしい。
そう思うと多少の親近感がわいた。
副社長のことだってただわがままな暴君だと思っていたけれど、苦労人と知って少しだけ見る目が変わった。
これからはもう少し優しくしようと、私は心に決めた。