暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

課長の話によると、創介副社長のお父様は重さんの長男で、兄弟は妹が一人。
その妹が朝お目にかかった龍ヶ崎夫人。
当然一人息子のお父様は一条コンツェルンを継ぐ者として育てられた。
大学卒業後は一条プリンスホテルに就職し、今の創介副社長のように働いていた。
とても優秀で人望もあり、ゆくゆくは一条コンツェルンを継承すると誰もが思っていた。
そんなお父様も25歳の時に大学時代から付き合っていたお母様との結婚。
反対はあったものの、二人の子宝にも恵まれ幸せだった。
しかし、33歳の時に交通事故で奥様共々亡くなってしまう。
当時創介副社長は小学生、妹さんは生まれたばかりだったらしい。

「傍若無人に見えるけれど、ああ見えて苦労をしているんだよ」
「そうなんですね」
全く知らなかった。

「ご両親が亡くなって、生まれたばかりだった妹は分家に里子として出されたけれど、すでに小学生だった副社長は寄宿制の学校に入れられたんだ。会長としては一条の跡取りとして育てたい思いがあって里子や養子に出すことはしなかったんだと思う」

創介副社長は、ずっと家庭ってものを知らずに育ったのか。
そう思うと、かわいそうだな。

「高校を卒業するまでは学校の寮にいて、大学からは一人暮らし。大学に入った頃に俺たちは出会ったんだ。何しろ一条の御曹司だからお金には苦労することがなかったはずだけれど、寂しい思いをしてきたのは間違いないと思う」
「そうでしょうね」
あの頑なな性格もその辺に理由があるのかもしれないな。