暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

「とても素敵だね。見違えたよ」
「そうですか?ありがとうございます」

副社長が会議に出かけた午後の時間。
谷口課長は副社長室へとやって来た。

「副社長に買ってもらったの?」
「ええ、お断りしたんですが・・・」
私から進んでもらったわけではないぞと主張してみた。

「いいじゃないか、もらっておけば」

気にすることはないと課長も言ってくれるけれど、なんだか申し訳ない気持ちになる。

「きっと、今回のことには副社長なりに責任を感じているんだよ」

責任はどちらかというと龍ヶ崎夫人の方にある気がする。
実際トマトジュースをぶちまけたのは龍ヶ崎夫人なわけだし。

「坂本さんは副社長のことをどのくらい知っているの?」
「どのくらいというのは?」
聞かれている意味が分からず顔を上げた。

「会長と君は面識があるんだよね?」
「ええ。父の古くからの友人ですので。でも、重さんが一条コンツェルンの会長だと知ったのはつい最近です」
「じゃあ、副社長の御両親のことも何も知らないんだね」
「ええ」

谷口課長は少し困ったなって顔をしてから、副社長の生い立ちについて話を始めた。